2017年 02月 11日
焼き締め中雑念記 |
ルツボ交換のために火を落としてしまうと何か心配事が消えたようでほっとするのだが、二三日もすると火の気がなくモーター音もしない作業場が心臓の止まった生きもののような気がして薄ら寒さを覚えてくるのだった。
いま炉の温度は800度ちょっとで、工房内は徐々に温みを帯びて来ている。今回は一回目の着火でどうしても火が点かず、電話で教えてもらいながら制御機器を一ヵ所づつチェックして行き、どこもにも異常がないのが分かった途端に無事火が点いたのはどういうことか。こういう時には機械にも意識があるのかなと思えてくる。以前ウインドウズMeがどうしても何も反応しなくなった時、説得に説得を重ねて再起動に成功したことがある。
やってる仕事がいわゆる「手仕事」なのでネットワークとかサイバーとかバーチャルとかあれとかこれとかをもしかしたら内心忌避していると思われているかもしれないが、全く逆で、コンピュータのお蔭で今まで仕事が続けてこられていると思っている。こちらから細々とでも情報を発信できるお蔭で嫌な奴に頭を下げたり上前をはねられたりすることなくいられるのだとおもう。
手仕事の作家に一番求められるのは何か、といえばそれは良いものを制作する能力であるのは当たり前であるが、その人にプレゼンの能力が全くない場合は苦戦するに違いない。だから、いま自分は修業中であるという殊勝な考えも持っている若い作家の人には、義務として本を読んで、メールを書いて、ブログを更新して、写真の腕を磨いて、自分のパソコンを使い倒すことをお勧めする。私は半分も出来ていないが他人のことはよく見えるのだ。みんなそうか。
by satofukigarasu
| 2017-02-11 12:42